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学会関連情報

第36回臨床皮膚科医会総会で共催セミナーを実施しました。

2020.12.21

秋晴れの9月22日、ホテルクラウンパレス浜松に於いて、NAOS JAPAN㈱共催セミナー「スキンケアから見たアトピー性皮膚炎」が開催されました。
今回の総会はコロナ禍の影響により会場とWebの双方で実施されましたが、早朝にもかかわらず、合わせて約100名にご参加いただきました。
戸倉先生は、「皮膚バリアと皮膚免疫から見た外用療法とスキンケア」というタイトルで、角質層の外側と内側で起こる事象に言及しながら、アトピーや乾燥肌への対処についての講演をされました。

アトピーの症状悪化の原因となる皮膚バリア障害、アレルギー反応、かゆみ

私たちのからだを覆っている皮膚は、外側の角質層と、その内側にある免疫細胞の層の二段階で外からの刺激物(専門的には抗原と呼びます)に対する防御を行っています*1。

▲皮膚バリアが外からの刺激を2段階でブロック*1(*1:戸倉先生の講演スライドを元に作図)

アトピーになると、「皮膚バリア障害」「アレルギー反応」「かゆみ」の3つの要素が重なって症状の改善と悪化が繰り返されます*2。
典型的な悪化のパターンとして、皮膚バリアが壊れる→抗原が体内に侵入する→免疫のスイッチが入り炎症反応やかゆみが起きる→患部を掻き壊して、さらに皮膚バリアが壊れる、という悪循環が起こることが知られています。

*IL=インターロイキン
▲「バリア障害、アレルギー反応、かゆみの連鎖*2」(*2:戸倉先生の講演スライドを元に作図)

皮膚バリア 病変部以外でも機能が低下

こうした悪い反応が繰り返されることで、長い間、辛い思いをする患者さんやご家族が多くいらっしゃいますが、具体的には何が問題なのでしょうか?

角質層の内部は、まるでミルフィーユのように、表皮の細胞と脂質(セラミド等)が何層も重なっています。
戸倉先生によると、皮膚バリアは“水分を保持する能力”と、“バリアとしての能力”の二つを持っています。
角質層の細胞にある天然保湿因子(NMF)は水分保持の主役としてよく知られていますが、これが変化するとフィラグリンというたんぱく質になって皮膚バリアをつくつるという点で、二つの能力は結び付いています。
ところが、慢性的な乾燥状態を伴うアトピー肌や乾燥肌(ドライスキン)では、フィラグリン、天然保湿因子、セラミドが減ってしまい、正常な機能を果たせなくなっているのです。
このうちフィラグリンについては、アトピー患者の2割から3割が遺伝的にフィラグリンを作れない状態にあると言われていて、さらにアトピーの皮膚では、病変部以外でもセラミドが少なく、皮膚バリアを通した“水漏れ”が起こっているということでした。
一見悪くなっているように見えない箇所でも、科学的にみると皮膚バリアが崩れ、水分が過剰に失われていることがありえるのです。
ということは、普段のお手入れとして、気になる部分だけでなく、広い範囲を敏感肌に合った洗浄料、保湿剤でケアしていくことが重要になります。

皮膚バリア 病変部以外でも機能が低下

アトピー肌の常在細菌叢(皮膚に定着している様々な細菌の全体のこと)、なかでもアトピーが悪くなると増えることが知られている黄色ブドウ球菌であることも取り上げられました。
常在細菌叢は個人により異なっていて、自分で変えようとしても変えることはできないのですが、細菌の種類が多い方が望ましいと考えられているそうです。

それでは、角質層を健康な状態に保ち、皮膚バリアを良好に機能させるために、どうすればよいのでしょうか?
戸倉先生のポイントは、皮膚科医による治療をきちんと受けながら、皮膚バリアを改善させるような保湿製品を選び、正しく使用することでした。
保湿製品の使用によって、アトピーの進行が抑えられたという研究があります。
また、韓国で行われたある化粧品の試験では、4週間の使用によって経表皮水分蒸散量(表皮からの“水漏れ”)が約2割、アトピーの症状がスコアとして約4割低下し、皮膚の状態も改善したと報告されたとのことです。

アトピーのケアは、本人ができることだけでなく、家族による支えも重要です。専門家である医師によく相談しながら、皮膚の状態をよく理解し、少しずつよくしていくための努力を続けていただければと思います。

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